つとむューニッキ(はてなダイアリー版)

つとむューのニッキです。

地縛霊が見えたなら

二○一×年。
オレはiPad2に映し出された画像を見ながら街を歩く。
この数年で三次元位置情報技術が進み、
iPad2のようなカメラ付き端末は、街歩きに欠かせないものになっていた。
例えば、はてなの本社にiPad2のカメラを向けると、
ディスプレイに映るビルに、会社案内や社長のつぶやきがオーバーラップする。
はてなココ3Dにも対応し、オレがつぶやくとそのツイートはこの空間に浮遊する。
端末を通してこの場所を覗くと、つぶやきが見れるという仕組みだ。


ぶらりと立ち寄った金閣寺を、オレはiPad2越しに見る。
すると金色の優雅な佇まいの映像に、建物の説明や歴史が次々と表示され始めた。
少しうっとおしく感じたオレは、池全体が見える塩梅に映像をズームアウトする。
すると、松の木の下に居る女の子がこちらを見ていることに気がついた。
「えっ!?」
オレは驚いて直に風景を見る。松の木の下には誰も居なかった。
『君は誰?』
オレは、端末の中だけに居る女の子にコメントを送る。
『やっと生きている人に気付いてもらえた』
女の子の返事と共に、一ヶ月前の入水自殺のニュースが画面に表示された。


『許せない』『A子達が憎い』
自殺前に女の子がその場に残したと思われるつぶやきが、次々と表示される。
『辛かったんだね』
オレがコメントを書くと、女の子は嬉しそうに微笑んだ。
『生きているうちに貴方に会いたかった。だって貴方の顔ってとても優しそう』
『君はオレの顔が見えるのか?』
『ほら、その端末にはカメラが二つ付いているでしょ。表と裏に』
オレがこちらを向くカメラを見ると、レンズがキラリと光ったような気がした。
『あなたの顔は忘れないわ。またお会いしましょう……』
ニヤリと不気味な笑みを残して、女の子の画像は次第に薄れていった。

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今回は「iPad2」で連想した小話を書いてみました。
将来、こんなことが本当に起こるかもしれませんよ。
それでも欲しいですか、iPad2? なんちゃって。




はてなダイアリー 今週のお題「iPad 2欲しいですか?」