つとむューニッキ(はてなダイアリー版)

つとむューのニッキです。

海に幸あれ

子供の頃、海で泳ぐのが嫌いだった。
だって、足元に海藻がたくさん生えていて、すごく不気味だったから。
足を着こうとすると、ヌメっとした感覚に襲われる。
オレは必死になって、両親にしがみついた。


まあ、それは、海水浴場じゃないところで泳がされていたからなんだけど。
一面に海藻が生え、ヒトデやカニが闊歩する砂浜。
今の日本に、そんな場所がどれだけあるだろうか?
思えば贅沢な体験だったんだと、オレは目を細める。


中学生くらいの頃、浜辺に子供達が集まっているのを見かけたことがある。
「すごい、すごい」と口々に叫んでいるから注意を引かれた。
近寄ってみると、子供達の中心には何かのいきものが。
それは――交尾中の二匹のカブトガニだった。


「ダメだよ君たち、そんなんじゃ!」
たまらずオレは、子供達の輪の中に入る。
「こうやって引きはがすんだよ」
一匹を子供達に捕まえててもらい、もう一匹をオレが引っ張った。


「んぐぐぐぐぐ、やった!」
やっとのことで引きはがしに成功。
しかしその直後、一匹は子供達を振り切って海へ逃走した。
予想をはるかに超える駆動力。オレはただ見ているしかなかった。


仕方がないので、オレの手元に残った一匹を浜に上げる。
「ほら、これがハサミだよ。ちゃんとカニしてるだろ?」
そして、ひっくり返して子供達とじっくり観察。
その後はちゃんと海に逃がしてあげた。


あの日以来、遠浅の砂浜に行くとカブトガニの姿を探してしまう。
子供達から守ったお礼を持って来るんじゃないかと、淡い期待を抱きながら。
しかし、あれ以来、生きたカブトガニを浜辺で見たことはない。
せめてもう一度、あの日のようなカブトガニの交尾が見たいものだ。




はてなダイアリー 今週のお題 「海」