つとむューニッキ(はてなダイアリー版)

つとむューのニッキです。

彼女の可能性にさようなら

「えっ、赤ちゃん産めなくなっちゃうの?」
子犬の去勢手術に際して、子供達が質問を投げ掛ける。
「何匹も赤ちゃんが産まれちゃったら、育てられないでしょ?」
説明するかみさんの言葉を聞きながら、オレは複雑な気持ちを抱いていた。


彼女だって、子犬が産みたいに違いない。
子孫を残すことは、生命として彼女が親犬から引き継いだ本能だから。
それを人間達の都合で断ち切ってしまう。
オレにそんな権限があるのだろうか?


かといって、子犬が産まれたら、何匹かは引き取り手が無くて困るだろう。
最悪、処分せざるを得なくなるかもしれない。
産まれる可能性を摘むか、生まれた新たな命を摘むか・・・
前者を選ぶことを前提に子犬を買ったことを、オレは思い出していた。


「これが取り出した子宮と卵巣です」
手術後の動物病院で、オレは現実を突きつけられる。
これで完全に、彼女の妊娠の可能性は排除された。
また妊娠できる簡単な処置かも――オレはなんて甘い考えを持っていたのだろう。


「赤ちゃん、見たかったなあ・・・」
動物病院から帰ってきた子犬を見て、子供達がつぶやく。
今年お別れした彼女の可能性を、子供達も心に刻み付けたことだろう。
その想いが、最期まで育てる責任に昇華するよう、ゆっくりと語り合う年末にしたい。




はてなダイアリー 今週のお題「2014年のお別れ」