わたしの部屋の運命は?
家から遠く遠く離れた街にいる。娘の受験の付き添いで。
今日は、大学の近くの宿舎を見学して、仮予約を済ませてきた。
――合格したら必ず入居します。
そんな約束を添えて。
その宿舎には、なんでも揃っていた。
ベッド、机、クローゼット、そして冷蔵庫。
だから家から持って行くものはほとんどない。
「なんだ、娘の部屋は今のままじゃないか」と、少しだけオレはほっとする。
玄関の上の、陽当たりのよい角部屋が娘の部屋だ。
きっと彼氏ができたら、窓に小石を当てて誘い出すに違いない。
「ダメよ、パパに見つかっちゃうから」
そんな二人を影から見守る――という夢は、遥か遠くの街に奪われてしまう。
この大学に合格すれば、娘のぬけがらが我が家に残る。
合格しなければ、娘とオレのささやかな妄想が我が家に残る。
どちらがいいかなんて、オレには答えられない。
でも明日になれば、試験会場に向かう娘の背中に励ましの言葉をかけているのだ。
五年後の『わたしの部屋』は、どうなっているのだろう?
遠くの街に就職した娘によって、ぬけがらが回収されているかもしれない。
それとも、就職に失敗した自宅警備員が、住んでいるかもしれない。
どちらがいいかなんて、やっぱりオレには分からない。
はてなダイアリー 今週のお題「わたしの部屋」